風俗嬢より:ちょっと言わせて
はじめに
木村映里さんの記事「風俗嬢の実態、教えます。」
を読みました。まだの人は是非そちらを読んでから、お読みいただければと思います。
彼女は看護学生であり、水商売をしていた経験があり、風俗嬢の知り合いも多いようです。
私も同じ看護学生ですが、風俗嬢当事者として、日ごろから思っていることを書いてみようと思います。
まず、カミングアウトをした彼女は非常に度胸があると思います。
相当な勇気がないと出来ないことなので、本当にすごいことです。
彼女には社会を変える力があると思います。
私には自分自身の身元を晒す勇気はありませんが、
彼女の勇気と問題意識に触発され、今回このような文章を書かせていただきます。
しばしの間、お付き合いください。
想像してみてください
あなたが男性なら恋人や好きな人が、女性なら何でも知っていると思っていた親友が、
①風俗嬢だったらどんな気持ちになりますか?
②それを打ち明けられたら、あなたはどんな風に対応しますか?
私が1番言いたいこと
この仕事をやっていて一番つらいのは、仕事内容よりも「誰にも言えない」ということです。
働いていることを誰にも言えないこと、嘘を付いてでも隠し通さなければならないことが
何よりもストレスだと感じています。
(看護学生らしく言うと、これは全人的な痛みにあてはまるのではないか?と思っています)
家族や恋人にはもちろん、仲の良い女友達にだって、口が裂けても言えません。
軽蔑されることや、これまで築いてきた人間関係が崩れるのが怖いからです。
誰にも言えないことなんて、「なんだそれだけのことか」と思うかもしれません。
でもたったそれだけのことで、苦しんでいる人が実際にいるということを、あなたに知ってほしいです。
身近な具体例から紹介していきます。
大学生の日常会話だとよく「バイト何してるの?」みたいな話になりますよね。当然答えられません。
バイトの前後に待ち合わせをすると、「今日何してたの?」とか「これから何があるの?」などと聞かれても、言えません。
世渡り上手な人なら、嘘を使いこなしながら適当にごまかしてその場を逃れられるのでしょう。
でも私は苦手なので、これがすごく苦痛です。
他の女の子たちに聞いてみると、居酒屋で働いている、などと言っている人もいるようです。
でも1つ質問に答えたら、どこのなんていう店?食べに行くよ!などという流れになってしまい、
また違う嘘を考えなくてはいけなくなって、さらに苦しむことになります。
そのため私は「何もしていないよ」と答えるのですが、
自分では頑張って働いているのに、なんだかなあ…
と答えるたびに思ってしまいます。
「バレたくない」という強い思いから、「人との関わり、深入りを避けるようになる」ことも十分考えられます。
それから、仕事をしていたら誰でも、嫌なことや悩みごとがあるでしょう。
愚痴りたいことや、逆にちょっと嬉しかったことなんかがあっても、誰にも言えないのです。
仕事を辞めるべきか続けるべきか悩んでいても、相談する第3者がいないのです。
誰にも言えないから自分1人で悩んで、落ち込んでしまいます。
実際に風俗嬢には、精神疾患にかかって、身体も心もボロボロになって辞めて行く人が多いのだそうです。
「俺はそういう女の子を何人も見てきたよ」というお客さんもいました。
私の場合は幸運なことに、ひょんなことから相談できる第3者が現れたのです。「風俗嬢である私」を知っているうえで、受け入れてくれて、愚痴を聞いてくれて、何か困ったことや悩みがあったらなんでも言ってねと話を聞いてくれ、応援してくれる存在です。その人と関わるようになってから、随分と気持ちが楽になったのを覚えています。
以上のことから、何でも話せる第三者の存在は、
まっとうな仕事として世間から認識されていない風俗嬢たち(みんな多かれ少なかれ心に闇=痛みを抱えています)に必要だと思います。
例えばカウンセラーが定期的にお店を訪問して、相談できる仕組みなどがあったら、
女の子たちの心が少しでも軽くなるのではないでしょうか。
よく病院や老人ホームに「傾聴ボランティア」が来ていることがありますよね。
風俗で働く女の子たちも、患者さんと同じように、傾聴と共感を必要としている、と私は感じています。
その次に言いたいこと
「需要があるから成り立っている仕事である」ということです。
働いていて思うのは、風俗店が潰れないのは、不況のなかでも通い続ける、必要としているお客さんがいるからです。
なんでこんなところで働いてるの? やめなよ、という人もたまにいますが、
私が今ここで辞めたところで、風俗店はなくならないし、
他の女の子は働き続けるし、現状は何も変わりません。
日本の性犯罪が諸外国と比べて少ないのは、風俗店の存在も影響していると思いますし、
私は風俗店反対と言っているわけではありません。
単純に考えて、お客さんがいる限り風俗嬢は働き続けるのに、
「やめなよ」などという発言はあまりにも無責任だとは思いませんか。
ただ、風俗嬢がもっと生きやすい世の中にならないかな、と心から思っています。
生きづらい理由は何よりも偏見です。
キャバクラ嬢は、少しずつ、人に言えない職業ではなくなってきたと思いますが、
風俗嬢はまだとても周りの人にカミングアウトできるような職業ではありません。
最後に言いたいこと
風俗嬢はみんな普通の女の子です。
ギャル風の子もいれば、OLもいるし、大学生もいます。
木村映里さんが書いているように、シングルマザーもいるのだと思います
(見た目ではわからないし、聞くことも出来ないので実際はわかりませんが)。
いじめなどは全くなく、仕事柄社交的な人も多く、みんなとても良い子なのです。
もしかしたら今さっき街ですれ違った女の子もそうかもしれないし、
今乗っている電車に3人くらいはいるかもしれません。
あなたの職場やクラスにも、現役・元風俗嬢が数人はいると思います。
そこらへんにたくさんいるんですよ。
つまり、私たちのことをもっと身近に感じてほしいのです。
「風俗嬢」というどこか特別な、住む世界が違う遠い存在として認識して、軽蔑して遠ざけるのではなく、
あなたと同じ社会を今ここに生きている1人の人間として尊重してほしいのです。
ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございます。最後にお願いがあります。
もし友達や恋人から、実は風俗嬢なんだ(だったんだ)と打ち明けられるようなことがあったとしても、どうか彼女を責めないでください。彼女が風俗嬢なんて、嫌だと思う人が大半でしょう。怒りや悲しみもこみ上げてくると思います。
でも、湧き上がる感情をそのまま彼女にぶつけるのではなく、その事実をまずは受け入れて、
そして出来るならば勇気を振り絞ってカミングアウトしてくれたことに対して
「頑張ったね、今まで誰にも言えなくて辛かったね」と労ってあげてください。
打ち明けることは、本当に勇気のいることです。
そして、あなたを信頼しているということなので、打ち明けてくれたことに対して感謝の気持ちを伝えてほしいと思います。
自分の意見を言うのはそれからにしてください。
まずは一度受け入れてくれるかくれないか、そこが打ち明ける側にとっては重要なことだと思います。
あなたが受け入れてくれることで、1人の女の子の気持ちがどれだけ楽になることか…!
おわりに
少しでも「風俗嬢」を身近に感じていただけたらなら、これを書いた意味があったと思いますし、嬉しい限りです。
また、この文章によって不快に思う方がいらっしゃいましたらこの場を借りてお詫び申し上げます。
拙文にお付き合いいただき、ありがとうございました。